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「換気も挿管もできない(汗」 とかいう悪夢のような現実

CVCIには未だ出くわしたことがありません。
それは喜ぶべきことなのだとは思いますが、
そんな経験不十分じゃ臨床医としてはダメなのではと自問している自分もいます。
「CVCIを乗り越えた経験」はあった方がいいけれど、けど。・・・・。

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旬を過ぎた話題で恐縮ですが敢えて貼るならば、これを。

大阪府羽曳野市の医療法人・春秋会城山病院で10月、麻酔医らが男性患者(56)の左手首の手術で全身麻酔した際、気道を確保するためのチューブを誤って食道に挿入し、患者が窒息死していたことが20日、病院関係者らへの取材で分かった。病院側は医療行為に問題があったと判断し、警察に通報。羽曳野署は、医師らが注意義務を怠った可能性があるとして、業務上過失致死の疑いで関係者から事情を聴いている。

 関係者によると、男性は9月上旬、勤務先の羽曳野市内の工場で作業中、包丁で左手親指の付け根部分を誤って切り、屈筋腱(くっきんけん)と神経を断裂。職場近くの病院で皮膚の縫合手術を受けたが、その後指が曲がらなくなり、10月13日に城山病院に転院。病院は同16日に神経の縫合手術を実施した。

 手術は16日午後1時半ごろから始まり、麻酔医や整形外科医、実習中の救命士ら6人が担当。神経縫合に時間がかかることなどから伝達麻酔ではなく、全身麻酔で対応することを決め、患者の同意を得ていた。

 患者の口から気管にチューブを挿入しやすくするため、麻酔医らが筋弛緩(しかん)剤を投与。麻酔医指導のもと、最初は救命士が挿管を試みたが、30秒以上たっても挿管できず、患者に酸素が送れていないことが判明。交代した麻酔医が、のどを切開するなどして応急処置を施したが、体内の酸素濃度が著しく低下し、約3時間後に死亡が確認された。

 病院側は死亡後、遺族に経緯を説明。府警と保健所にも通報した。捜査関係者によると、司法解剖の結果、死因は窒息死で、患者の食道内にはチューブが残り、約25分間無酸素状態になっていたことが分かった。

 担当した麻酔医は羽曳野署の事情聴取に「患者は首が太く、ヘビースモーカーだったこともあり、通常より気管挿管が難しかった」と話したという。羽曳野署は、麻酔医らが十分な注意を怠り、漫然と気管挿管を実施したことが死亡につながったとみている。

 福本仁志院長は産経新聞の取材に「極めて残念なことであり、ご冥福(めいふく)をお祈りする。捜査には全面的に協力し、再発防止に努めたい」とコメントした。

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Cormack Ⅲaくらいなら盲目的でも入ることはよくあるので
このケースでも入るかと思っていたらつっついて
急速にむくんでしまった、とか?
体型的な問題でdesaturationが早くて
急速に循環虚脱に至ったのかもしれません。
ちょっと強調しておきたいのは
「循環停止時の食道挿管は見逃される危険が高い」ということで、
ETco2が検出されなくても食道挿管を否定できなかったりとか
逆に食道挿管でもごく最初はETco2が検出されることもあったりするので
「食道挿管に気付かないわけがない」という慢心は
首を絞めることになりかねないと、これは傍らの人の入れ知恵でもあるわけですが。
実際、熟練した麻酔科医がERで食道挿管に気付かなかったというケースを
わたしは数件耳にし(ry

食道挿管(気切チューブの食道挿入)に気づいていれば
結果は違ったかもしれないけれど
違わなかったかもしれない。
このケースを医学的にレトロスペクティブに討論するならば
失わずに済んだシナリオは描けるかもしれませんが、
それと業務上過失致死の疑いは全く別の話。
詳細はわからないけれどでも
きっと担当されていた先生は普通の麻酔科医なのだろうなと思うし、
いつかはわたしがその場に立っているかもしれないとも思います。

困難気道に対するアプローチにも思うところはありますが、
長くなるのでまたそのうち。機会があれば書かせて下さい。

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最後になりましたが、
先の件でお亡くなりになった患者さんのご冥福を
心からお祈りします。
by fabius_a | 2009-12-04 23:22 | わたし